このブログのレシピを使ってパン作りに挑戦する前に、知っておいてほしい注意事項を説明します。
基本的には、全てのレシピに共通する注意事項です。パン作りを始める前に、ご一読ください。
材料
パン作りに使う材料は、日本で簡単に用意することができるものを使っています。そのため、ドイツやフランスで作られるパンを完全に再現しているわけではありません。
完全再現よりも、パン作りを始める際のハードルを下げることや、パン作りを通して得られる楽しさを優先しています。
レシピではパン作りに使う穀物の粉を、強力粉、中力粉、小麦全粒粉、ライ麦粉など種類で示し、特定の銘柄では示しません。
小麦粉はメーカーによって様々な銘柄(日清製粉カメリヤ、日本製粉イーグルなど)があります。
レシピに示された種類(強力粉など)の中であればどの粉を使っていただいても構いません。
ただ、同じ種類の粉でも銘柄によって水の入り具合が微妙に異なるため、水の量を調整する必要が出てくる場合があります。
一部の材料は使用量が少なく、小数第一位まで示しているものがあります。これらは四捨五入せず、レシピ通り計量してください。
こういった材料は発酵に関わるものが多い(イーストや天然酵母など)ため、正確に量らないと発酵時間に影響を及ぼします。
道具
パン作りに使う道具は、できる限り家庭用で、安価で手に入るものを使うようにしています。
これもパン作りを始める際のハードルを下げ、パン作りを通して得られる楽しさを優先させるためです。
パン作りを始めるにあたり、一度に多くの専門的な道具をそろえる必要はありません。
最低限必要なものはオーブンレンジ、大きめのボウル、デジタル温度計、0.1g単位で計量ができるデジタルスケールです。
カンパーニュなどの楕円形のパンを作りたい場合は楕円形の発酵かご(丸形ならボウルで代用できます)が必要です。バゲットなどの細長いパンを作る場合はパンマットもあった方が便利です。
その他の道具はパン作りを始めてから、「あった方が便利だな」と感じた時に用意すれば十分です。
計量
パン作りの材料はレシピ通り正確に計量します。デジタルスケールを使用し、正確に計量してください。
液体を量る場合は計量カップではなく、デジタルスケールを使用した方が正確です。また、砂糖や塩を大さじ小さじで表記しているレシピを他で見かけますが、これもデジタルスケールを使用した方が正確です。
一部の材料は使用量が少なく、小数第一位までレシピに表記しているものがあります。
これらは「材料」の項目でも触れましたが、四捨五入せずにそのままの量を計量してください。そのため、0.1g単位で計量ができるデジタルスケールが必要になります。
小麦粉など、100g単位で使用する材料は少しのずれは大きな問題にはなりません。
例えば小麦粉を300g使用するレシピで、実際には303gになっていたとしても、ずれはわずか1%です。
しかし、イーストを0.9g使用するレシピで、実際には1gで量っていたとすると、ずれは11%になってしまいます。
こういった理由から、小数第一位までレシピに表記されている材料は四捨五入せずにそのままの量を計量してください。
パン生地の仕込み
パン生地の仕込み(生地作り)は、手でこねて作ることもできますし、機械を使って作ることもできます。
パン生地作りに使う機械は、ホームベーカリー、ニーダー、スタンドミキサーがあります。
これらはそれなりに高価な機械なので、無理に用意する必要はありません。時間と労力を惜しまなければ、手ごねでも充分おいしいパンを作ることができます。
小麦粉のみを使ったパン生地は、しっかりと時間をかけて滑らかになるまで生地をこねる必要があります。
ライ麦粉の生地は混ぜるだけです。ライ麦粉と小麦粉が混ざった生地は、小麦粉の使用比率が高くなるほど十分にこねる必要が出てきます。
発酵温度と発酵時間
レシピには生地ができ上った時の理想の生地温度(目標こね上げ温度)が記載されています。
実際のこね上げ温度と目標こね上げ温度に差があった場合は、発酵時間の調整が必要になります。
こね上げ温度が目標よりも高いとパン生地の発酵速度は速くなり、反対に低いとパン生地の発酵速度は遅くなります。このような理由から、発酵時間を調整する必要があります。
レシピには生地を発酵させる場所の温度(発酵温度)と発酵時間が記載されています。
実際の発酵温度がレシピに記載された温度よりも高いとパン生地の発酵速度は速くなり、反対に低いとパン生地の発酵速度は遅くなります。そのため、発酵時間を調整する必要があります。
このように生地温度、発酵温度と発酵時間は密接な関係にあるということを知っておいてください。
温度や時間の管理は難しく感じるかもしれませんが、パン作りに取り組んでいるうちに、間違いなくできるようになります。
乾燥対策
パン生地は非常に乾燥しやすく、対策をしないまま長時間空気にさらすとすぐに乾いてしまいます。
パン生地が乾くとボリュームが出にくくなり、焼成後のパンの表面にはブツブツとした細かい気泡が現れます。
そのため、発酵時はパン生地が入ったボウルにラップをかける、濡れふきんを被せるなどの乾燥対策が必須になります。
焼成
焼成はパンを焼く工程のことです。一部の平焼きパンを除き、パンの焼成は家庭用オーブンレンジで行います。
焼成温度は250℃まで設定できるものなら、十分おいしいパンを焼くことができます。上位機種では300℃まで設定できるものもありますが、250℃まで温度が上がれば十分です。
ごく一部のパンに限り、焼成温度が高い方が良いものもありますが、その数は多くはありません。
予熱
パンを焼く際は、事前にオーブンを予熱しておく必要があります。
レシピには焼成温度が記載されています。パンの発酵が終わった時点ですぐに焼けるように、レシピの焼成温度に合わせて予熱をしておきます。
予熱を始める際は、ひっくり返した天板を最下段に入れておきます。十分に熱せられた天板にパンを乗せて焼くことで、下火(下方向からの熱)を十分に活かすことができます。
ただし、一部の小型パンは天板を入れずに予熱を行うものもあります。
レシピ通りの温度、時間で焼いたにもかかわらずパンの底面に焼き色が付きづらい場合、オーブンの特性上、下火が弱い可能性があります。
熱風で焼くタイプのオーブン(コンベクションオーブン)は下部に熱源がないモデルもあるため、そういったものは下火が弱くなる傾向にあります。
ドイツパンやフランスパンのボリュームを出すためには、下火の強さが重要になります。下火が弱いと焼成時の伸び(オーブンスプリング)が足りなくなるからです。
対策としては、耐火レンガやピザストーンを使う方法があります。予熱開始時にどちらかを入れておき、それにパンを乗せて焼きます。
また、鋳鉄鍋を使う方法もあります。鋳鉄鍋に収まるサイズのパンに限られますが、鍋ごと予熱し、パンを入れ、フタをして焼くことで生地から出る蒸気を留めることができるため、この後で説明するスチームも不要になります。
これらは蓄熱性が高いため、十分に予熱しておけば下火を補ってくれます。ただし、予熱時間が長くなるということを頭に入れておいてください。
焼成温度と焼成時間
レシピにはパンの焼成温度(何度で焼くか)と焼成時間(何分焼くか)が記載されています。
この焼成条件は、私が実際にパンを焼いた経験をもとに設定していますが、使用するオーブンレンジが変わると適切な焼成条件も変わる可能性があります。
オーブンレンジはメーカーごと、機種ごとに多少の違があります。全く同じ焼成条件で焼いても、オーブンレンジが違えば焼き上がりに違いが出ます。
そのため、お使いのオーブンレンジの特性を理解し、焼成条件を調整する必要があります。
焼成条件を調整する場合、焼成時間を固定し、焼成温度を調整します。適切な焼成時間で焼き上がるように、焼成温度を調整してください。
窯入れ
ハースブレッド(直焼きパン)の場合、パン生地は焼成前にベーキングシートに移し、オーブンレンジの庫内横幅に収まるサイズの板に乗せ、そこから滑らせるようにオーブンレンジに入れます。
型焼きのパンの場合は、やけどに注意しながら手で型に入ったパンをオーブンレンジ内に入れます。
一部の小型パンは天板にパンを乗せて発酵をとり、やけどに注意しながら手で天板に乗ったパンをオーブンレンジ内に入れます。
家庭用オーブンレンジは庫内が狭いため、扉を開けている時間が長いとすぐに庫内温度が下がってしまいます。
そのため窯入れは素早く行い、できるだけオーブンレンジ内の温度が下がらないように気を配る必要があります。
スチーム
ドイツパンやフランスパンの多くは、焼成時にスチームを出す必要があります。
お使いのオーブンレンジに焼成中にスチームを出す機能があれば、それを使うのが簡単です。タンク式と呼ばれるスチーム方式を採用しているオーブンレンジがこれにあたります。
スチーム機能が無いオーブンレンジの場合、予熱開始時に金属製の小さなカップ等を入れておき、十分に熱せられたカップに100ml程度の熱湯を入れることでスチームを出すことができます。